シルヴェスター・スタローンとヒールアップシューズ——「ロッキー」を作った男が、もうひとつ密かに作っていたもの
スタローンの身長については、長年にわたって議論が続いている。本人は5フィート10インチ(約178cm)と主張するが、1990年のシカゴ・タイムズ紙は「本物のランボーは公称5フィート10.5インチだが、それはエレベーターシューズ(英語圏では一般にElevator shoesという。シークレットシューズは和製英語)と呼ぶしかない靴の効果込みだ」と報じた。さらにあるイタリア人シューメーカーは「16年間、彼を4.5インチ(約11cm)高くし続けた」と語っている。
つまりスタローンは、ロッキーがスクリーンを駆け回っていた時代から、ずっと靴の中に戦略を持っていた。
最大の敵は、共演者の身長だった
ロッキーシリーズを振り返ると、スタローンの「身長の戦略」が鮮明に見えてくる。ロッキー4でドルフ・ラングレン(196cm)と対戦したとき、スタローン自身が「エレベーターシューズを履いて戦っているのに、馬鹿げている」と冗談めかして語っている。身長差は20cm以上。それでも彼はリングに立った。
映画の中でロッキーは常にクリード、クラバー、ドラゴといった巨大な対戦相手より小さく描かれている——しかしそれはストーリーの一部だ。スタローンはアンダードッグであることを、映画の武器にした。スクリーンの外では靴で高さを補い、スクリーンの中では低さをドラマに変えた。二つの戦略を同時に使いこなしていた。
脚本を売らなかった男の、もうひとつの選択
スタローンの話で欠かせないのは、ロッキーの脚本をめぐるエピソードだ。プロデューサーはロバート・レッドフォードかバート・レイノルズを主役に据えて35万ドルで脚本を買うと提案した。スタローンはその条件を断った。自分が主演しないなら売らない、と。
無名の俳優が、35万ドルを断った。
その同じ男が、身長という問題に対しても自分なりの答えを出し続けた。周囲の目線や業界の常識に流されるのではなく、自分がどう見えるかを自分でコントロールしようとした。靴はその一つの手段に過ぎない。
「弱点」を持ちながら、頂点に立つということ
スタローンには言語障害と顔面の部分麻痺があった。それでも俳優の道を選んだ。身長、言語、顔——いずれも「この業界では不利だ」と言われる要素を抱えながら、彼はアクション映画の頂点に立った。
ロッキーはアカデミー賞にベストピクチャーを含む10部門でノミネートされ、スタローン自身も主演男優賞と脚本賞の両方でノミネートされた。映画史上3人しかいない、同一作品でその二冠を達成した人物のひとりだ。
身長が問題なのではない。自分の立ち位置を、自分で決めているかどうかが問題なのだ。